佐藤 大輔さん(林業・独立)

佐藤 大輔さん

林業は命を循環させる 植物相手の責任ある仕事

恵那市の中心部から車で15分ほど。一面に広がる田畑を通り過ぎ、坂道を登ります。恵那市で20年ほど林業に携わる佐藤大輔さんは、クレーン付きのトラックがやっと通れる細い道を通って、山の奥へと入っていきました。

「山のすぐ際まで民家があるでしょう。強風で木が倒れると危ないから、伐ってほしいと頼まれているんです」。

現在、林業に従事する人が減り、手入れされないままの山が増えています。密集した木々を間伐することで土砂崩れなどの災害を防ぎ、明るい光が入って多様な草木が育つ豊かな森になるといいます。

「伐った木は運び出し、材木になる予定です。木はモノではなく、命ある植物。計画的に収穫し、資源として適正に利用していけば、山は枯渇しないエネルギー源になり得るんです」。

▲夕立山森林塾が開始した林地残材を「木の駅」に出荷し、山をきれいに、町を元気にする「木の駅」プロジェクト。地域通貨と交換でき、地域の店舗で買い物ができます。

理想と現実のギャップを乗り越えて

高校時代に環境問題に関心を持ち、卒業後は奈良県内の森林組合に勤務。その後、移住した恵那市でも森林組合に勤めました。先輩の背中を見ながら技術力を高める一方で、自分の理想と現実の生活にギャップを感じる日々でもありました。

「木の成長に合わせて収穫し、適切に利用するのが理想。そのためには40年、50年先を見据えた山づくりが必要ですが、現実には日々の安定した稼ぎがないと生活できません」。安価な輸入材に押され丸太の価格が低迷する中、少しでも早期に出荷できる木を伐る。しかしこれを続けていくと、細い木や曲がった木ばかりが山に残ってしまうと悩んでいました。そんな折、恵那市で活動する「自然農塾」のメンバーが佐藤さんに声をかけ、森づくりの大切さを伝えるNPO法人夕立山森林塾に参加。地域の人と共に山の管理法を考えることや、林業を始めたい人を対象とした講座「山しごと手習い塾」などの活動を続けてきました。

「林業界には現状を発信できる人が少なかった。仕事をしながら自発的な活動もするのは苦労も多いです。でも、担い手を増やし、新しい仕事の方法をみんなで考えることが、山で働く人たちの地位向上にもつながると考えています」。

▲チェーンソーの刃が当たっても破れにくい特殊なウェアや靴を身に着けて山に入る。「昔と違い、今は安全に作業できる道具が揃うようになりました」

田舎暮らしを始める人を応援したい

「これからも、新たに恵那市で暮らしたい、農林業を始めたいという人のお手伝いもしていきたい」と語る佐藤さん。自身が独立した当時は頼れる窓口や補助金がなく、苦労も多かったと話しています。「林業を始めたい人は『岐阜県立森林文化アカデミー』で知識や技術を学んだり、『岐阜県林業労働力確保支援センター』に相談したりすることがお勧め。受けられる研修や給付金も紹介してもらえると思います。林業は体力的に厳しく、危険な作業も伴う仕事。憧れだけでは続かないのも現実です。しかし、こうした公的な支援も充実しているので、やる気のある人にとっては、いい時代だと思いますよ」とアドバイスをおくります。

佐藤さんに聞きました!

移住に関する情報をどうやって収集した?

農的な暮らしを求めて、先に移住した人たちの仲間に入りました。そこでNPO法人夕立山森林塾を知りました。

移住に関して大変だったことは?

自分が理想とする暮らし方と、収入を得るための仕事を両立すること。葛藤は今でもありますが、同じ理想を持つ仲間がいるから頑張れます。

現在の住まいは?

一戸建てに妻と2人暮らし。恵那市に住み始めた頃から借りていた家を、10年ほど前に大家さんから「買わないか」と言っていただき、ローンを組んで購入。

現在の仕事は?

伐った木を原木市場に販売したり、地元の方からの依頼で間伐など山の手入れをしています。並行して、まちづくりや人材育成に関わるNPOの代表も務めています。

これからの夢は?

これまでは比較的、仕事や地域活動優先で働いて来たので、今後は仕事とプライベートのバランスも大事に考えていきたいですね。

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