里山スプーンづくりを通じて、森の魅力を伝えたい(森林率81%の岐阜県へ移住&転職)

全国で初めての森林教育・学習機関として誕生した「岐阜県立森林文化アカデミー」。卒業生の山路今日子さんに、学んだことや現在のお仕事について、お話をおうかがいしました。

名古屋市内から車で1時間ちょっと。岐阜県美濃加茂市にある「みのかも健康の森」では、近年、世界的に人気を集め、日本では岐阜県が最先端をリードする〝グリーンウッドワーク〟と呼ばれる生木を使ったものづくりが体験できる。

「丸太を割って、まだみずみずしい状態の木を使ったものづくりです。やわらかく、スプーンなどちょっとしたものであれば、道具を使って手で加工しやすいんですよ」
と教えてくださったのは、親しみのある笑顔が印象的な山路今日子さん。

今年の4月から「可茂森林組合」に勤め、里山整備の事務仕事をしつつ、ここで木工のワークショップを開き、森のことを「伝える」活動もしている。

「木の魅力は、それぞれ個性があって、手で削ると、感触や硬さ、香りも違うことですね。木の種類を覚えると、山に入った時もこの木は何かな?と目がいくようになって、すごくおもしろいですよ」

山路さんは名古屋市出身。33歳のとき、森のことを学びたいと思い、見つけたのが、森と木に関わるスペシャリストを育成する専門学校「岐阜県立森林文化アカデミー」だった。

10年以上勤めた大手医療用装具メーカーを辞め、学校へ入学することを決め、岐阜県の美濃加茂市へと移住した。

「学校からはちょっと遠かったんですが、美濃加茂市は里山の整備に力を入れていて、のどかできれいな里山風景が残っているところが良いなと思い、暮らしはじめました」

転職や移住のきっかけのひとつは、地元の名古屋で激化する住宅開発だった。市内に残っていたわずかな山も舗装され、気がつけば、同じ家がずらりと建ち並んでいた。

「子どものときに、よく家族で山を歩きに行った楽しい記憶が原点にあるのかな。漠然と森林のことを伝えるお仕事がしたいな、と思ったんです」


実習で製作したお弁当箱。授業では、毎年、岐阜市内の店舗にご協力いただき、販売まで行う。

森林のことを伝える上で、知識をしっかり身に付けたい。「伝える」ためには何か武器があった方がいいと思い、林業・森林環境教育・木造建築・木工の専攻があるなか、具体的な技術を身につけたほうが、「伝える」ことがしやすいのではないかと、木工を選んだ。

入学してすぐ、まずは約70種類の木々を覚え、ノミとカンナの使い方を勉強。さらに、0・1ミリ単位の精度で正確に加工できる機械の使い方なども学んだ。

ものづくりに関しては、もともと手先が器用で、以前勤めていた会社でも、オーダーメイドでコルセットや足のサポーターなどをつくっていた。

そのことから、2年間でめきめきと上達し、才能を開花させた。

 

森林に関するあらゆるプロデューサーを育てる

「彼女は手先が器用で、うまかった! センスがありましたね」
と語るのは、山路さんを指導した久津輪雅先生。

20代はマスコミ業界で働き、30代で木工の世界に飛び込み、イギリスで家具職人へ。現在も日々、海外への視察を行ない、「木のものづくりの新しい可能性の開拓」をテーマに探求。日本におけるグリーンウッドワークの第一人者として注目を集める。

「うちの学校は、職人を育てるよりも、プロデューサーやコーディネイター、起業家と言われる人たちを育てたいと思っています」


久津輪雅先生。著書に山路さんと制作した『グリーンウッドワーク 生木で暮らしの道具を作る』。

参加者みんなで、木のスプーンをつくる「スプーンフェス」が世界的にブームと知れば、日本版を開こうと、現地担当者と連携し、「さじフェス」を開催。学生とともにイベント運営も手がけ、地域の人に参加を呼びかける。

そんな個性的な先生が多い。さらに、開学19年目を迎え、卒業生の間で、学科を超えたつながりが生まれ、地域にネットワークも。そのため、卒業後にも、森を使ったあらゆることにチャレンジしやすい。

最後に山路さんに、これからの目標をおうかがいした。

「美濃加茂市のみなさんに、すごく後押ししていただいているので、まずは地元の方に、木のものづくりを通じて木を身近に感じてもらいたいですね。それから山に入りたいな、という方を増やしていきたいですね」

 

岐阜県立森林文化アカデミーとは?

森と木に関わるスペシャリストを育成する、2年制の専門学校。全国で初めての森林教育・学習機関として、平成13(2001)年、「森林と人との共生」を基本理念として開学した。
岐阜県美濃市曽代88  https://www.forest.ac.jp/


敷地内にある「ウッド・ラボ」(木材棟)の作業室。大型木工設備が充実している。


2017年度の木造建築専攻の実習「自力建設」として建てられた「里山獣肉学舎」。林業専攻では狩猟の授業もあり、イノシシや鹿を解体する施設として利用されている。全て県産材。


学生に指導する、久津輪雅先生。学生には、30歳前後で脱サラした社会人経験者が多く、企画運営ができる人材が多く集まる。

 

「森のジョブステーションぎふ」のバックアップ体制

岐阜県における森林技術者の確保・定着支援の総合窓口として、林業に興味のある方々や、林業に新規就業した方々など全面的にバックアップしています。
岐阜県美濃市生櫛1612番地2
https://gifu-shinrin.or.jp/labor

【知る】

広く林業の魅力を知っていただく取り組みを行っているほか、林業に興味を持った方々に対して「林業就業相談」や「就業相談会の開催/出展」などを行っています。

【体験する】

実際に体験してみたい、という方々に対して「林業体感・見学セミナー」や「林業就業支援講習」などの機会を設けて、林業への理解を深める取り組みを行っています。

【学ぶ】

森林文化アカデミーで林業就業に向けて学ぶ学生に対して「緑の青年就業準備給付金」により、支援しています。

【就業する】

林業就業を希望する方々に対して、林業に特化した「無料職業紹介」や「求人情報検索サービス」などを提供しています。

【極める】

林業に新規就業した方々に対して「フォレストワーカー集合研修」などの各種研修を行っているほか、各種助成金などにより、新規就業者の定着などを支援しています。

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