TURNSのがっこう-岐阜科-6限目「地場産業」開催レポート

2019年12月14日(土)の『TURNSのがっこう岐阜科』の授業テーマは「地場産業」です。一見すると堅く聞こえてしまう、このテーマ。
輸入品に押されてしまったり、後継者がなかなか見つからなかったりと課題もたくさんあるテーマですが、ここ数年でファンを増やしている企業・人が大勢います。
今回の授業は、そんな「地場産業」に携わる岐阜の移住者を講師にお呼びして、トークを聞くだけではなく“触れる”こともできる授業を実施しました。

まずは、岐阜県の紹介です。

岐阜県は、4人に1人は製造業に携わっていると言われるほど、全国トップクラスのものづくり県です。
自動車産業・航空宇宙産業・IT産業・観光産業などの大きな分野から、刃物・陶磁器・木工・紙などの生活に密着した分野まで、様々な種類があります。
製造業の知識を得るための学びの場もあります。
例えば、講師の長屋さんも卒業した『多治見市陶磁器意匠研究所』。
ここでは「やきもの」の新たな未来を開いて行くために、人財育成を中心に海外とつながり、デザインを通して「やきもの」の魅力を発信している場所として多くの作家を輩出しています。

多治見市陶磁器意匠研究所
https://www.city.tajimi.lg.jp/ishoken/

そうした、ものづくりの材料・学校・人が揃っているのが、岐阜県の魅力なのです。

参加してくれた市町村は関市でした。

関市は、名古屋から車で一時間のところにあり、日本全体の人口重心地でもあります。“まちなか暮らし”と“田舎暮らし”の両方を送ることができる、“バランスのある”地域です。
特殊な地形をしており、エリアや地区によって雰囲気や気候は若干異なります。関市の上部にある板取地域には、エメラルドグリーンの色をした板取川があり、この地域の水はびっくりするくらい滑らかで透き通っており美味しいと評判です。
綺麗な水を求めて、この地に移住してきた人たちもいるほどです。(千葉県にある某大手テーマパークで売られている水は、洞戸地区の水を採用しています。)

また、最も注目すべき点は、古くから“刃物のまち”として親しまれてきた場所であるということ。
ハサミ、包丁、爪切り…様々な刃物を地域密着で長い間作ってきました。毎年秋頃には、「刃物祭り」や「関の工場参観日」といった、市全体で刃物に触れるイベントも開催しています。

※関市の詳しい情報は、「関市移住ポータルサイト」をご覧ください。
https://www.sekikurashi.com/

お待ちかねの講師トークが始まりました!

1人目の講師は、美濃焼の産地・多治見市で暮らす『3RD CERAMICS』の長屋有さんです。

長屋さんは、名古屋市で生まれ育ちましたが、多治見市の『多治見市陶磁器意匠研究所』に入所し、卒業後は仲間とともに『3RD CERAMICS』を立ち上げました。

『3RD CERAMICS』という名前は、作家や工場が沢山溢れる中で、その“真ん中くらいの立ち位置”で何かできないか、という意味で名づけたそうです。起業した理由を問うと、「いずれ起業しようと思っていたのですが、一回就職してしまうと、起業の立ち上げに時間がかかってしまうと思っていました。また、ちょうどその頃、いま同じ職場で働いている土井くんが、量産のメーカーに勤めていたこともあり、量産の技術やメーカーとの付き合い方が詳しかった。そういった力を借りながら起業することができました。」様々なタイミングが重なって、立ち上げに至ったのだそうです。
「僕らはデザイナーではない、あくまでも“陶芸家”。現場におちている日々の発見を作品に落とし込んでいくことを意識して制作しているんです。」陶芸家でありながら、量産していく技術の知識も持ち合わせているのが『3RD CERAMICS』の魅力です。

作品へのこだわりについても語ってくれました。「商品の一つである黒泥皿(こくでいざら)は、黒い土に白い釉薬をかけることで、真っ黒ではなく、この微妙な色合いを作り出しています。
フラワーベースは、一点もので、釉薬で遊んでいる商品。白いものはお花が映えますし、赤いものは“めちゃくちゃ釉薬かっこよくないですか?”という商品です!
このように、細部にこだわってやっていかないと、残っていけないなと思ってます。僕らは僕らしかできないことを、手の届く範囲で、自分たちのスタンスを崩さずにこれからも続けていきます。」

そう語る長屋さんの表情からは、ものづくりを続けていく上での熱意と揺るがない信念が伝わってきました。

 

2人目の講師は、関市で『ニッケン刃物株式会社』で代表取締役を務める熊田祐士さんです。

『ニッケン刃物株式会社』は、熊田さんのお父さんが経営していた会社ですが、お兄さんが東京で家を建てられたことをきっかけにUターンを考え始めました。
それまでは、東京のシャープ株式会社でバリバリ働いていましたが「東京は同期も多いし楽しいお店も多いけど、中小企業には“やりたいことがスピーディーにできる”というメリットがある」と考え、家業を継ぐことを決意しました。

現在ハサミは、安価な中国製の輸入などで、職人はどんどん減ってきています。
しかし、そんな課題がある中、商品開発した「日本刀はさみ」が大ブレイク!2016年のお土産グランプリにも輝きました。

この商品は、20〜30代の社員が“格好いいハサミを作りたい!”という想いからできたもので、日本刀女子と言われる若い女性をターゲットに開発されましました。

ポイントは、刃が緩やかにカーブしているところ。このカーブがあるからこそ、切るときに対象物がしっかりと刃に挟み込まれ、滑らかにきれいに切れるのだそうです。商品が売れ出した頃、タレントの厚切りジェイソンさんやウド鈴木さんが取材に来られ、社員のモチベーションもさらに高まっていきました。

その後は、クラウドファンディングで多くの支援を集めた「日本刀ペーパーナイフ」が浅草や京都などの観光地で外国人に多く売れたり、『ワンピース』や『エヴァンゲリオン』とコラボレーションした商品が開発されたりなど、次々と新しいアイディアが生み出されていきました。
ターゲットを細かく設定し、社員がワクワクする企画を実現することで、新たなファンも獲得している素晴らしい会社です。

講師のトークがひと段落したところで、ランチタイムです!担当は『TURNSのがっこう岐阜科』お馴染みのminokamo長尾明子さん。作ったメニューはこちら!

・美濃加茂市で取れたお米「初霜」のおにぎり
・関市上之保の柚子をかけた原木椎茸のコンフィ
・マッシュポテト
・ほうれん草のソースをかけたミートボール
・赤かぶ漬け

岐阜の食材をふんだんに使ってくれました。

器はもちろん『3RD CERAMICS』の黒泥皿です。絶妙な色合いをしたこの黒泥皿。
ほど良いカジュアル感で、料理も引き立ててくれる、超“優秀”なお皿です。

また、調理をする際に『ニッケン刃物』のキッチン用ハサミを使い、野菜を切って作ってくれた長尾さん。まるで“実演販売”のように試して見せてくれました。そうしたハサミの便利さも伝えられた時間となりました。

後半はクロストークです。参加者の方から頂いた質問にも答えていきます。

−「新商品のアイディアはどのようにして考えているのですか?」
熊田さん「社員がワクワクするものを考えるようにしています。また、自分は雑貨屋巡りがめちゃくちゃ好きで…(笑)、ハンズやロフトではバラエティ雑貨など、刃物商品以外もめちゃくちゃ見て、今何が流行っているのかインプットします!」
長屋さん「考えるのが趣味のようなもので、毎日、1日中ずっと考えています。そして、思いついたものはとりあえず作ってみる。それを繰り返してます。」

−「地域の協力はどのようにして得ていますか?」
熊田さん「関市の特徴は“分業性”。外注もできるし、これを作りたいと思ったら作れる環境があるのが関の強みです。あとは、社員のモチベーションを上げるのも大切にしています。『ワンピース』とのコラボ商品を作っているんだということで、モチベーションが上がる社員もいるわけです。」
長屋さん「多治見市には焼き物に関わっている人がめちゃくちゃいるんです。居酒屋で焼き物の話をしようものなら自然と話しかけてくる人が大勢いる。それと土や釉薬がすぐ買える環境という面で、多治見に住わざるを得ない(笑)。」

話は尽きませんでしたが、講師それぞれの「地場産業」に対する考えを聞くことができました。

そこの地域だからできるもの、それが「地場産業」です。
それは、原料がその地域から採れるということだけではなく、それを支えてくれる地域の人々がいてこそ成り立つもの。
何かあった時に手を貸してくれる、応援してくれる地域の人々が岐阜には大勢います。

作り手だけでなく、周りの人々と一体になってできている、それこそが岐阜の「地場産業」の魅力なのです。

Pocket