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participant report 4

美濃和紙の魅力を広げよう!「ぎふクラフト室」のプロジェクトで現地を視察してきました

重要伝統的建造物群保存地区

岐阜県の中央部に位置する美濃市。その中心的観光地でもある「うだつの上がる町並み」は、1300年の歴史を誇る美濃和紙が栄えたエリアで、江戸時代から明治時代にかけて特に栄えた商家や紙問屋の建物が建ち並びます。


「うだつの上がる町並み」はその名の通り、「うだつ」があがっているのが特徴。
「うだつ」とは、屋根の両端を高くしてつくられた防火壁のことで、裕福な家しか「うだつ」はつくれなかったそう。そのため「うだつ」は憧れや願望の象徴だったようです。
「うだつがあがらない」という言葉の由来はここからきているそうで、その意味を知って、なるほど……でした!


今回はそんな「うだつの上がる町並み」を訪れて、美濃和紙の魅力をもっと広く伝えていこう!ということでたちあがった、株式会社SAGOJO主催のプロジェクト『ぎふクラフト室』メンバーの、現地視察の様子をお届けしたいと思います。

視察に訪れたメンバーは、千葉や大阪、そして地元岐阜も含め、年齢も職種もバラバラの8名。実際に和紙の手すき体験をはじめ、生産工場や加工販売している会社などを訪問し、美濃和紙の現状と課題などを聞いてきました。

※全国の地域事業者とユーザーをマッチングし、地域の課題解決を目指す株式会社SAGOJO(本社:東京都 品川区 代表取締役:新 拓也 以下「SAGOJO社」)は岐阜県美濃市と連携し、「空き家の活用」や「美濃和紙産業の振興」に向き合いながら、岐阜県美濃市の地域ファンを増やす地域コミュニティ『ぎふクラフト室』をオープン。

 

美濃和紙とは?


その前に、まず美濃和紙とはいったいどんな和紙なんでしょうか。
美濃和紙は日本最古の紙ともいわれ、その歴史は1300年にもおよびます。岐阜県美濃市の長良川と板取川の流域で脈々とつくられてきた美濃和紙は、古くは皇室をはじめ、宮中や関白などへの献上品でもありました。
その品質と技術力の高さから、1969年(昭和44年)には国の重要無形文化財、そして2014年(平成26年)には、本美濃紙の手すき技術が、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、日本最大和紙のひとつでもあります。
*日本三大和紙・・本美濃紙・美濃和紙(岐阜県)、越前和紙(福井)、土佐和紙(高知県)

そんな美濃和紙ですが、厳密には以下の3種類があります。
●本美濃紙・・茨城県で栽培される大子茄子楮(だいごなすこうぞ)のみでを使用し、本美濃紙の指定条件を満たす伝統的な製法でつくられたもの
●美濃手漉き和紙・・美濃手すき和紙共同組合員がつくる、流しすきにより製造されたもの
●美濃機械すき和紙・・手すき和紙に近い光沢・風合い・強靱さがだせるように製造されたもの
それぞれの用途や特徴によって、さまざまな商品となっているようです。

~1日目:美濃和紙の手漉き体験と企業訪問~

■ まずはオリエンテーション


では、早速現地の視察レポートにまいりましょう!
1日目は「うだつの上がる町並み」の路地裏に建つ「WASHITA MINO」に集合。この建物は古民家を再生して2021年7月にOPEN。コワーキングスペースや宿泊施設、飲食店などが入る場として使われています。


まずはメンバーの自己紹介から始まり、今回の視察の目的などを共有し、いざ出発!

■ 美濃和紙について学べる「美濃和紙の里会館」


まず向かったのは「美濃和紙の里会館」。美濃和紙について学べる施設で、美濃和紙に関するイベントや展示、そして実際に自分で紙すき体験をすることができます。

ちょうど訪れたときには「第35回全国和紙画展」と題した展示会が催されており、和紙を使ったさまざまな絵や作品のアートを鑑賞しました。
ちぎる、巻きつける、切る、異素材で組み合わせる……といった平面のイラストから立体的なものまで、一体どうやって作っているのか?と目をこらしながら「紙」×「アート」の世界をたっぷりと感じることができました。

■ 手すき体験をしてみました!

次は和紙の手すき験です。まずは和紙の種類を選びます。「美濃判」「落水紙」「はがき」の3種類があり、アレンジで紅葉の葉を入れたりもOK!


和紙の種類が決まったら次は工房に入り、スタッフの方から作り方の説明を受けます。今回体験するのは「流しすき」という紙すきです。

使うのは「簀(す)」と「桁(けた)」のセットで「すけた」という道具です。美濃和紙の職人さんも実際に使っているそう。

流し台のような台は「すき船」といい、中には「那須楮(なすこうぞ)」や「トロロアオイ」の根をすりつぶして水で溶かして抽出した粘液など、天然の原料を溶かした紙料になります。
まずは「すけた」の持ち手を両手で持って、すき船の化粧水をすくい、横ゆり(横にゆらして捨てる)→ 縦ゆり(縦にゆらして捨てる)を繰り返します。こうすることで、繊維が絡み、厚みができてムラのない和紙になります。


教えてもらった通りやってみますが、水をすくうとバランスが崩れ、ゆらすのが意外と難しい!みんな握る手に力が入ります。

さきほどすいた和紙の上に、アレンジでもみじやプラスチックの型を置いて、好きな模様をデザインします。

その後シャワーを上からあてて和紙に模様をつけ、乾燥したらできあがり!


太陽の光で透かしてみると、和紙の風合いが特に感じられます。それぞれ自分だけのオリジナル商品のできあがり!

■ 身近でカワイイ便せんや封筒を手がける「古川紙工株式会社」


次に訪れたのは「古川紙工株式会社」さん。主に美濃和紙の企画・販売をされている会社です。
創業は天保6年(1835年)で、創業時はお茶や生活雑貨を取り扱う商店から、曽代生糸(そだいきいと)という蚕(かいこ)を入れるマス目の入った和紙づくり、そしてマス目を入れるという技術をヒントに学校で使用する模造紙の製造……と、変遷をたどってきました。

そして現在はユーザーからのニーズを商品に反映した、柄のついたかわいい便せんなどを主に企画・販売しています。

古川紙工さんの商品は「かわいくてほっこりしたデザイン」が特徴。社員の7割が女性ということもあってか、温かみを感じるイラストやデザインです。商品開発や企画は、消費者ニーズから拾っているそう。
例えばそのひとつが「手帳デコ」。本来の便せんの使い方ではなく、切りとって手帳に貼って楽しむという新しい使い方が人気で、その年代も30~40代の利用が多いということも意外でした。

ユーザーからのニーズをいち早く汲みとれることが強みである一方、課題も……。
●平面的な商品がメインで立体的な商品を作っていきたい
●伝統があるにも関わらず、知られていないし紙とふれあう機会も少ない
●透かしの和紙の見せ方が難しい
●継続的に使ってもらえる商品をつくりたい
●価格が高い など


参加メンバーからも、消費者目線でいろんな意見が出ました。最近では時代にあわせ、SNS等でもライブ発信などされているそうですが、ユーザーからの声をダイレクトに聞くことができる強みもいかして、今後の商品開発に期待したいです!

■ ”使命感とワクワク” を胸に!「丸重製紙工場」


次に訪れたのは、和紙の製造・卸会社で和紙の機会すき工場「丸重製紙工場(まるじゅうせいしこうじょう)」さんを見学しました。


辻(つじ)社長から、工場でメインで扱っているパルプのお話から天然の材料(こうぞやみつまたなど)との違い、針葉樹と広葉樹のそれぞれの紙質の特徴、そして手作業の工程を、どういった機械を使って仕上げるのか……などを実際に見ながら、説明をお聞きしました。

「ビーター」というパルプを水に溶かしてたたき潰す機械。

「円(まる)あみ」という透かし模様入りの、網のドラム缶状の機械。茶道で使う透かしの懐紙の国内の9割を占めているそう。

これまでの事業はB to B(企業間取引)メインでしたが、現在はB to C(消費者間)にも力をいれており、実際に直営店舗の運営やホテル事業も手がけていらっしゃいます。
また、SDGs にも積極的に取り組み、紙材もバナナの茎やたばこの幹、ネギといった意外な材料でリサイクル和紙・サスティナブルな新しい和紙などの商品も生まれています。
こうした積極的でオープンな事業マインドの根底には 「自分の町や和紙産業を衰退させたくない」「美濃の町の価値・和紙の魅力を知ってもらいたい」 という、美濃で生まれ育ってきた辻社長だからこその熱い想いが伝わり、胸に響きました。

■ 年に一度の祭典「美濃和紙あかりアート展」


さて、1日目のしめくくりは、ライトアップされた町並みを散策。年に一度開催される「美濃和紙あかりアート展」が開催中でした。*2022年は11月30日まで


道路沿いにはさまざまなデザインの灯りが並び、ひとつひとつデザインはもちろん、灯りのともり方やライトの色づかいなどが楽しめました。(コロナ対策や雨対策として、現在はひとつひとつがケースで覆われ、それぞれの距離も離しての展示方法となっています)
あかりが灯ることで、昼と夜の町の表情が全く違うのも魅力のひとつですね

~2日目:和紙店舗・ワラビーランド見学~

■ ”和紙の糸”からこんな商品まで?!「松久永助紙店」


2日目の最初の訪問は、うだつの上がる町並みの一角に建つ「松久永助紙店」。30年程前から和紙の糸を開発し、5年程前からはオリジナルブランドででさまざまな商品開発をしている会社です。
和紙の糸の原料はマニラ麻という、フィリピンでとれる植物の繊維。丈夫で成長も早く、コスト的にも優れ、土や海にかえしても微生物が分解してくれるので環境にもやさしい(サステナブル)というのが特徴です。

さらに和紙糸の良さは高い機能性にもあり、抗菌性・消臭性・吸水性・保温性・保湿性などにも優れている点。そのほかにも、軽くて毛羽立ちが少ないなどの特徴もあります。
それを証明するかのように、お話くださった松久さんが着用している服から靴まですべて和紙糸の素材からできていると聞いて、一同ビックリでした!

帽子やマスクケースのほか……

草履やアクセサリーも!

BEAMSとのコラボ商品の帆布バッグ。持ち手はすべて和紙糸でできているそう。軽くて丈夫!


そんな優秀な素材の和紙糸ですが課題や展望も……。
●価格が綿の約3倍と高い
●商品の魅力や良さを知ってもらい届けるまでが難しい
●認知度が低い
●他企業とのコラボで新しい商品開発と発信にも力を入れたい……など。
商品になると、素材(和紙糸)まで意識が向きにくいのと、価格においてもその価値をどう伝えたらいいのかなど、ここでも認知度の低さと価格というのが課題のようです。

■ お気に入りの和紙が見つかる!和紙専門店「Washi-nary」


次に訪問したのは、同じく町並みの一角にある「Washi-nary」さん。こちらは丸重製紙工場が運営する和紙専門店です。


店内は和紙を使った照明をはじめ、さまざまな種類の手すき和紙や機械和紙がズラリ。その手すき和紙をつくる職人さんの紹介パネルなどもあり、ひとりひとりの想いも伝わってくるようでした。


そのほか、マスキングテープやつまみ細工とコラボしたアクセサリーなどの商品などもあり、着物などの伝統のモノ同士のコラボも素敵でした。
またお店には 珍しい”和紙ソムリエ”さんもいらっしゃいます。和紙のこと、あれこれ質問して和紙の世界のことを深堀してみるのもいいですね!

■ 人×和紙×自然の里「Warabi Paper Company(ワラビーランド)」


現地視察最後の場所は、美濃市蕨生(わらび)在住の手すき和紙職人・千田崇統(せんだたかのり)さんの工房 「ワラビーランド」 “です。

「ワラビーランド」とは、和紙の手漉き体験をはじめ、宿泊、アーティストたちによる新しい作品を生み出す場所など、人と和紙と自然を軸に、里山体験ができる施設です。
クラウドファンディングで資金も調達し、2023年6月のOPENに向け、徐々に形になっています。

具体的には工房に隣接する古民家を改装し、部屋の壁にはさまざまな和紙を使用。壁ごとに違う素材の和紙やデザインの内装の部屋も実現。そのほか柿渋を使ったり、自らDIYで、和紙の魅力を存分に体感できる空間となっています。

繊細な透かしのデザインを光が通り抜け、なんとも幻想的。

千田さん曰く、観光地的な場所ではなく、じっくり滞在して技術を学べる場所も検討中とのこと。
単なる和紙のみの紹介ではなく、和紙の原料となる楮の栽培から、伝統技術の体験と継承、それをどのように活用していくか…といった丸ごと和紙の世界を体験できる、長期的な視野での「ワラビーランド」。5年、10年後、一体どんな里山になっているのか楽しみです!

今回参加メンバー8名とともに、美濃の町並み、そして美濃和紙について、さまざまな角度から学んだり触れ合う機会となりました。
最後のディスカッションでは、美濃和紙への新たな気づきやアイデア、さらにはどうやって美濃和紙やその魅力を広げていくか、新しい商品の提案といった意見もでました。


『ぎふクラフト室』としての今後の取り組みとして既成概念 はいったん置いておき、さまざまなアイデアを出し合い、そこから商品につながるヒントの糸口・きっかけをつくっていきたいと思います。
また、共通してみえた課題としては、美濃和紙の価値をいかに広く知ってもらうか、まだまだ認知度が低いという点です。加えて価格が高いという点を、いかにその価値を知ってもらって伝えられるか……といったマーケティングの要素も大事だと感じました。
あとこれは美濃市に限らずいえることだと思いますが、現地(観光地やそこで展開するショップや住人含め)の人たちの意識が、わたしたち外部の人間といっしょに盛り上げていこうという協同姿勢があると、目指す方向への近道になるのではと思います。