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interview

魅力的な人・もの・資源につながって
建築を考えられる場所

伊藤維さん

- 伊藤維建築設計事務所 代表
シンガポール工科デザイン大学 特任助教

プロフィール

1985年生まれ、岐阜県本巣市出身。東京の設計事務所を経てアメリカの大学院に留学、スイスにある大学で建築学科の助手を3年間勤めたのち、2020年に日本に帰国し、岐阜市美殿町で「伊藤維建築設計事務所」を設立。住宅や工場、展示計画、コワーキングスペースなどを手掛けている。シンガポール工科デザイン大学の特任助教としても活躍。

岐阜市中心には全国有数の繁華街として知られた柳ヶ瀬商店街があります。老舗の和菓子屋や古くから愛される食堂に加え、お洒落な飲食店や雑貨屋も続々とオープンする人気スポットです。岐阜県本巣市で育った伊藤維さんは、長期にわたる海外生活を経て帰国、生まれ育った岐阜県で設計事務所を設立しました。現在は一級建築士として働く伊藤さんにお話をうかがいます。
移住前はどこでどのようなことをしていましたか?

東京の設計事務所に勤務したのち、アメリカ(マサチューセッツ・ニューヨーク)に大学院留学と仕事で3年滞在したあと、スイスのチューリッヒでETH Zurich (スイス連邦工科大学チューリッヒ校)の建築学科で助手として3年間勤務。設計の授業や修士設計の指導を中心に、設計の教育・研究に携わりました。そのかたわら、建築家として日本の住宅や内装などの設計の仕事をしていました。

▲スイス在住中に設計した埼玉の住宅
移住のきっかけは何ですか?

2020年夏頃に帰国をして自身の設計事務所の実務を本格化させつつ、建築教育にも異なる形で携わろうというイメージを漠然と持っていました。いくつかの設計プロジェクトが終了し、雑誌などの媒体に掲載されたことにより、お仕事の問い合わせをいただいたり、スタッフになりたいという方から連絡をもらったことも大きかったです。COVID-19によりオリンピックは延期となり状況もガラッと変わりましたが、予定は変えずに帰国することにしました。

移住の決め手は何ですか?

大都市にも大自然にも近く、一方でさまざまな営みや活動が近くにあると感じました。魅力的な人たちがすでにたくさん活躍されていて、多種多様な人・もの・資源に触れられるとができるという点で、自分自身の建築に対する関心・実践を掘り下げるのにおもしろい場所だと感じたことがきっかけでした。
また中部国際空港まで1時間強で行けるため、海外とのつながりを生かしながら活動できそうだと感じたことも大きかったですね。スイスの授業の一環で岐阜県白川町を題材にした時に岐阜県の可能性を感じたこと、また海外の暮らしで、いわゆる「大都会」を拠点にすることにこだわりが薄れたことも影響しています。

他に候補地はありましたか?

帰国と事務所設立の本格化に際し、東京で構えるという選択肢もありましたが、既述の理由から、地元の岐阜に拠点を構えようと思いました。地元がよりよい街になるよう貢献したいと思っていたところ、大学院のスペイン人の恩師に「いい街にはいい建築家がいるものだ」と言われたことも、後押しになりました。

どのようなプロセスで移住しましたか?

6月にスイスから東京(妻の自宅)に帰国し、14日間の自主隔離期間を経て、岐阜に引っ越す段取りを組みました。その後、実家にお世話になってアパートを探し、7月には本格的に移り住みました。

利用した支援制度や補助金はありますか?またどのように情報を入手されましたか?

移住した段階では、タイミングや枠組みでフィットするものがうまく見つかりませんでした。現在、遡って申請できるものがないか確認中です。

移住してまずはじめにしたことは何ですか?

最初は事務所をシェアさせてもらいながら仕事を進めていました。同時進行で古いビルの一室をフルリノベーションし事務所として整備。廃材として捨てられる予定だった木材をいただき天井や壁、家具を作ったり、別の仕事で使った東濃ヒノキの端材を上がり框や窓枠に使ったりと、興味のある建築材料の循環について考えながら色々と実験的な試みをしました。地元の友人である大工さんが付き合ってくれたり、学生さんが塗装を手伝ってくれたりして、楽しかったですね。

▲岐阜でリノベーションした事務所

現在はどんな仕事をされていますか?

住宅や農家さんの拠点、工場、展示計画、コワーキングスペースなど、多種多様なプロジェクトの設計が進行中です。東京や京都などが先行していますが、岐阜でも少しずつご相談をいただいています。

また教育者としては、国立のシンガポール工科デザイン大学(SUTD)で設計を教えています。昨年秋は状況を鑑み、岐阜市・岐阜県のご協力をいただきながら、岐阜市の公共建築のリノベーションを学生と一緒に考える課題にフルリモートで取り組みました。
▲2020年11月に手がけた東京のプロジェクト
どんなときに岐阜に移住してよかったと思いますか?
  • 水やご飯がおいしい
  • 空気がきれい
  • 制作に集中できる
  • いろんな仕事をしている人に会える
  • 休日のモーニングが清々しい
  • 実家の家族に近い
地域とのつながりはありますか?

事務所近所の飲食店の方とはすっかり顔なじみになりました。
商店街の方や近所の建築家、また大学の先生に大変お世話になっています。
昨年11月にはYanagase PARK LINEの設計を協働するという貴重な経験もさせていただきました。

▲2020年11月に金華橋通りで行われたイベントの写真です。この会場構成を担当しました。
岐阜に移住して驚いたことはありますか?

高校時代には知らなかった色々な世界やコミュニティの存在を知り、驚いています。
また柳ヶ瀬の街も、随分と印象が変わりました。なくなったものもあれば、新しい魅力もたくさんあり、興味深いです。
あまり子どもの頃は意識していませんでしたが、とても喫茶店が多いと感じています。

住んでいる地域の魅力を教えてください。

いい喫茶店が近くにあります。
すぐそこにある長良川にも日々癒されています。

お気に入りの場所があれば、好きな理由とともに教えてください。

喫茶店
コーヒーの美味しさはもちろんですが、幅広い世代の方が利用される空間にはいい時間が流れています。多様な人がいるコミュニティを感じます。

長良川
東京に住んでいた頃に、長良川や根尾川といった大きな川の存在はとても大きな存在だったとに気づかされました。高校時代は応援団に所属して、長良川の河川敷で練習をしたものでした。その思い出もあってか、橋を渡ったり河川敷で過ごすと元気をもらえたり、清々しい気持ちになります。

美殿町・柳ヶ瀬エリア
おもしろい店や昔からの店、またいろんな仕事が入り混じっていて……。仕事をする場所として、いいリズムと刺激をもらえます。

メディアコスモス
とても好きな図書館建築で、実家の家族もお気に入りです。新しい市庁舎もできて、さらに人の行き交う・集まる魅力的な場所になると思いますが、現在立ち入れなくなっている旧県庁舎も良い形で再生されるともっと良いな、と建築家の目線では思っています。

森・原木市場・製材所・工房など
車を少し走らせるだけで、澄んだ空気の中で営まれている壮観な木のモノづくり・建築づくりの現場を体感できます。スイスでの教職時は、東濃ヒノキの産地である白川町や美濃市、飛騨・高山のみなさんに大変お世話になりました。岐阜市中心部なら、金華山の生態系についてもっと知りたいという興味があります。

岐阜のお気に入りの食べ物を教えてください。

いちご・梨・柿・米
味噌カツ

岐阜で好きな季節はいつですか?

最も過ごしやすいという点から、「秋」です。他の季節も好きなところはたくさんありますが、夏はやっぱり暑いですね。

休日はどのように過ごされていますか?

本を読んだり、DIYをしたり、出かけたりと、いろいろです。
ゆっくりと時間をとって、喫茶店や事務所でプロジェクトのことを考える日もあります。

移住を検討されている方に一言お願いします。

自然も街も入り混じった環境でおもしろいことがしたい、楽しい暮らしがしたい、という気持ちや活動を受け止めてくれる地域とコミュニティが岐阜にはたくさんあると思います。

一度岐阜から離れてみて、岐阜に対する印象は変わりましたか?

いろいろな街で暮らしてみると、他の街の魅力を知ると同時に岐阜だけが持っているおもしろさや長所について感じられるようになりました。